ロケうら~「ドクターX外科医・大門未知子」と「G線上のあなたと私」と「台風19号」

このたびの台風第19号により、お亡くなりになられた方々ならびに大切なご家族を亡くされた皆様、また、お怪我や被災された皆様には、心よりお悔やみとお見舞いを申し上げます。

台風19号は相模原市のみならず各地に甚大な被害をもたらし、今もなお避難生活を続ける方々がいらっしゃいます。被害に遭われた方々へは、謹んでお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復旧を心よりお祈り申しあげます。

さがみはらフィルムコミッションつくい事務局では一時的に受付を停止しているところですが、撮影の問い合わせは後を絶たず。台風前に決まっていたロケは地域に配慮しながら進めているのですが、被災地域と免れた人たちとの温度差を痛感しています。

今回は先日放送になりました「ドクターX外科医・大門未知子」「G線上のあなたと私」のロケの裏側をお話ししたいと思います!長文ですがお付き合いくださいませ。

「ドクターX外科医・大門未知子」

今回も失敗しない女医・大門未知子の痛快医療ドラマ制作が決定!

オープニングシーンでは、お決まりの「出会い」と「事故との遭遇」ですが、今回はどちらのシーンでもご支援することができました。

撮影隊の中でロケ地を探す役割を担う部署を「制作部」と言います。今回、制作部からのオーダーは「露天風呂」「ポツンと一軒家」「事故が起きる岩場」の3つでした。最初のお問い合わせは7月下旬でした。

まずは「露天風呂」

市内には日帰りの入浴施設がありますのでそちらを紹介しましたが、残念ながら他の場所に決まりました。

次に「ポツンと一軒家」

この言葉を聞いたとき脳裏に浮かんだ家は1軒だけ。山の上に本当にポツンとある古民家です。もうここしかないだろうと思って自信満々で写真を提供しました!他にもそれに見立てられるだろういくつかの家をご紹介したのですが、イメージが違うとのことでこれもダメでした。

そして「事故が起きる岩場」

台本を読んでもどんな場所なのイメージがわきませんでした。参考になる写真を送ってもらうと、それはアメリカのアンテロープキャニオンのような赤茶けた岩肌の、人ひとりがやっと通れるような狭い切通しのような場所で、上から岩が落ちてきたことにしたいという場面設定でした。

うーん。これは相模原には無い。というか日本にあるのか?と思わせる参考写真でした。調べてみると切通しの道は鎌倉や千葉など各地にあることがわかりましたので、そういうところを当たったらどうか?とお返事しました。それに付け加え、もし相模原市内で紹介するとしたら、設定は少し変わってしまいますがこんなところがありますよとご紹介した場所があります。

「相模湖休養村キャンプ場」

石老山の麓にある、山に中のキャンプ場です。
市内の山ロケの半分くらいはここにお世話になっているのではないかというくらい、毎年何かしらの撮影を受け入れてくださっているキャンプ場さんです。

このキャンプ場の一番奥に私もお気に入りの場所があります。
山深い沢に鎮座する苔むした奇石巨石たち。神秘的なその場所は、ここぞというときにしか紹介しません。荒らされたくありませんし、良いシーンで使ってもらいたいという特別な思いもありました。

「参考になればですが、巨石がゴロゴロした場所です。撮影機材は現場近くからは手運びですし条件は良くないかもしれませんが、石が転がってきたことにすれば成立するかもしれません。」

写真を添えてお返事しました。

数日後「いけるかもしれません!それからあの古民家も監督が見たいと言っています!」もうないと思っていた古民家が急転直下の急浮上!
当初のイメージは洋風の別荘のようなところだったそうで、古民家だという時点で落選していたのですが方向転換されたようでした。
結果、数度の下見を経て「ポツンと一軒家」「事故が起きる岩場」2か所のロケーション提供が決定しました。8月中旬のことでした。

そうと決まればロケまでの準備!当日の動き、車両の配置、備品の手配、お弁当屋さんの紹介などなどやることはたくさんあります。
そうした日々を乗り越えて晴れてロケ当日を迎えるわけですが、当日だって簡単に済むかといったらそうでもないんです。
ハプニングはいつ起こるかわかりません!

はじめにキャンプ場ロケが行われました。
少し現場の写真をお見せしますね。

こんな山奥ですが、現場の近くまでは車が乗り入れ可能で、山のロケ地としては優秀。


人、人、人!


起伏があり、人がいられる場所が限られており、取材のみなさんは陣取りに四苦八苦


エキストラさんの衣装で、ここの設定が静岡だと知る(あるある)


手で手を洗う男。美術さんは笑顔でした。


ロケ弁は「なかみせ」さんにお願いしました。本日のメニューは「うなぎの蒲焼弁当」と「とんかつ弁当」さすがです!

そして今回のハプニングは!
とあるスタッフさんから「助けてください!」と。
事情を聞きましたら「トイレにスマホを落としてしましました!!!!!」って。
う~ん。笑えないけど笑うしかない(笑)
「そのスマホ、上から見えますか?」と聞くと「少し埋まっていますが・・・」
みなさん察してくださいね。
結末はというと、その方、なぜか奇跡的にご自身のお子さんの虫取り網を持ってたんです。
伸び縮みするやつ。もうそれしかない!何とか届きそう!
3人がかりで15分くらいでしょうか、格闘した末に回収成功しました。
きっと運が付いていいことありますよ!

さて次に、古民家ロケの様子です。


ハイエース1台ががやっと上がれる細い道を行った先にこの古民家はあります。


なぜ遠くの山を見つめているのかというと


ドローンが飛んでいたのでした
ものの数秒で向こうの山まで飛んで行った!

家の中はほぼすべて持ち込みで、一日がかりで飾り付けました。

このススキは美術監督のリクエストにお応えして、近所の河原から刈ってきたもの。
地元産!

この日はとにかく暑い!暑くて暑くて役者さんもスタッフも汗だくでした。

プロデューサーさんのおもてなし、かき氷屋さんがオープン!
すべて自前で、なんとシロップも自作でした。役者さんはじめスタッフみなさんに大好評でした!

エンドロールチェック!

この現場で、あのスマホの持ち主と再びお会いしましたので確認、確認。
「スマホ、大丈夫でしたか?」
「はい!大丈夫でした!本当にありがとうございました!」
めでたし。めでたし。
みなさんご協力ありがとうございました!

「G線上のあなたと私」

お問合せは8月終わり。ロケ日は9月中頃と決まっている。渓流釣りのできる川を紹介してほしい。こんなリクエストを頂きました。ドクターXの準備と並行で動かなくちゃ。忙しい、忙しい!そんな中でしたが、数か所の渓谷や河原をご紹介。最終的に候補に残ったのは神之川キャンプ場でした。


神之川キャンプ場の一番奥。水を湛える素敵な景色。

エンドロールチェック!

無事にロケ地が決まったあとのことです。9月あたまに大雨が降りました。
キャンプ場さんから「ロケができる状況ではない」と連絡が入りました。
無理強いするわけにはいきません。早速現状報告のため制作部の担当者へ連絡しました。
取り急ぎ現場を見に行きますとのこと。残念だけど諦めるしかないと思っていました。
ところが「ロケ現場予定の場所は大丈夫でした!なんとかできそうです!」との返事。
えー!無理してまでそこでやらなくてもいいのに・・・。
「現地で撮影の許可ももらったので大丈夫です。」って。
ふぅ。
心配の種がまた増えてしまいました。

当日。

なんとかお天気も持ちこたえ、この日を迎えることができました。

まずはキャンプ場の方にご挨拶。この度はご無理を言って申し訳ありません。
受付の女性はいつもにこやかで気さくな方。
この日も「大丈夫よ、あそこでよければ撮影してくださいね。魚も頼まれてるし、無事に終わるといいわね!」
ちょっと肩の荷が下りました。

「でもね、実は昨日急に県からの許可が下りて整備できたのよ!本当にギリギリ。社長が一生懸命直したのよ」

そうだったのか。やはりご無理させてしまった。
再び恐縮し頭を下げました。本当にすいません。


出番を待つ岩魚たち。現場近くで待機していました。


この橋を渡った向こう岸が現場です。


橋の袂には「この橋は、一人ずつ渡ってください」と書かれています。みなさんルールを守ってました!この橋も社長の手作りだそうです。

今回は釣り監修として相模大野にあるフライショッピングBARTON(バートン)のご主人が関わっていらっしゃいました。お話しを伺うと、監修のお仕事は初めてだそうで、撮影現場の人の多さ、時間の掛け方、すべてに感動しておられるようでした。同じ市内の方とお話しできて、こちらもほっこりしました!

フライフィッシングショップ バートンのHP

http://hw001.spaaqs.ne.jp/flybarton/

今日のロケ弁は青野原にある「松緑」さん。

遠い現場まで配達してくださいました。ありがとうございます!

そして

台風19号がやってきました。先から注意情報が出ていましたが、これほどの被害が出るとは誰が想像したでしょう。
お世話になっているロケ受け入れ先の、特にキャンプ場はどこも壊滅的でした。

台風後に行ける範囲で現状を見に行きました。

映画、ドラマ、TVCMなど、たくさんのロケを受け入れてきた青野原の野呂ロッジさん。
敷地はあとかたもなく流されて半分以下に。水の威力を見せつけられました。


青野原オートキャンプ場さん
なんとか営業できそうなのはBサイトだけ。Aサイト、Fサイトは川になり、Cサイト、Dサイトは段差ができてしまい、河津桜も数本流されてしまったそうです。


このまさわキャンプ場さん
キャンプ場に渡る橋の上まで土砂が埋め尽くしています。受付やバンガローにも土砂が入り、見るに堪えない状況です。

このほかのキャンプ場も土砂被害で、年内もしくは来春までは営業できないかもしれないと。

励ましに出向いたつもりでしたが、何とか再建する!という決意を持った方々に会うことができ、逆に励まされて帰ってきました。

ドクターXでお世話になった相模湖休養村キャンプ場へお電話してみましたら「あの現場は跡形もない。とにかくひどい」とのことでした。

G線上のあなたと私のロケ地、神之川キャンプ場さんには行けませんでした。
ニュース報道等でご存じのことと思いますが、神之川キャンプ場の経営者の方が川に流されてしまい、後に発見されお亡くなりになったことが確認されました。
いつもロケのためにご尽力いただきました。残念でなりません。

日々地元のため、市のPRのため、作品のため。
関係する様々なお仕事をさせていただいておりますが、こんなに悲しいことはなく途方に暮れる日々です。

以前にもお話ししたことがありますが、ひとつ誇れるとしたら、もう見られない景色が映像として残っていること。薄れていく記憶とは違い、映像は鮮明で記録に残ってさえいればいつでも見ることができます。そしてこのことをお伝えしたいと思いこの記事を書きました。

被害地域の復活にはたくさんの労力が必要で、莫大な時間がかかることでしょう。
その隙間を縫うようにロケ地の案内は続けていかなくてはなりません。

ロケ誘致は地域経済の活性化が望めます。
よく例えとして「お祭りがやってきたようなものだと思ってください」とお話しするのですが、人が集い、物事を成し遂げ、経済がまわり、嵐のように去っていく様はよく似ています。いつかまた、あのお祭りのような撮影隊のみなさんをお連れできるよう、地域の復活を見守り、そのためのお手伝いを続けていきます。

重ねてになりますが、被害に遭われた方々へは謹んでお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復旧を心よりお祈り申しあげます。

長文お付き合いいただきありがとうございました。

yama

カテゴリー: New, おたすけったー's news, ロケうら   パーマリンク

コメントは受け付けていません。